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イベントレポート

大学×企業 産学連携教育の取り組み ~変わる働き方、変わる大学教育~

イベントの様子

近年のライフスタイルの変化に加え、新型コロナウイルスの流行によりテレワークの普及、オンラインでの学習、様々なサービスやコミュニティが生まれました。SDGsをはじめとする課題解決に向け、社会全体が大きく進化しようとしています。

大学では数理・データサイエンス・AIを取り込んだ教育を導入し、学生が在学中に実践的経験を積む機会を設けるため、企業から講師を招いての特別講義や、インターンシップ、教育プログラム共同開発などを行い、学生がキャンパス以外の社会から学ぶ機会を設けています。

本シンポジウムでは、産学連携の取り組み課題を含めて、これからの社会を生きる学生が10年後、20年後の未来にも通用する力を身につける教育について、皆様と共に考えます。

開催日時
2021年12月23日(木)14:00~17:00
開催方法
会場 Innovation Space DEJIMA(東京都・五反田)
オンライン(Zoom Webinar)
主 催
CAUA

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講演内容

オープニング

深澤 良彰 氏(早稲田大学 理工学術院 教授、CAUA会長)

深澤 良彰 氏(早稲田大学 理工学術院 教授、CAUA会長)

深澤 良彰 氏
(早稲田大学 理工学術院 教授、CAUA会長)

中世におけるイタリアのボローニャ大学の講義風景を描いた、教育関係者には大変有名な絵があります。この絵を見ると、先生が教壇で話をして、ノートをとってまじめに参加する学生もいれば、寝ている者も勝手に話している者もいる。つまり、この頃からほぼ1000年もの間、大学ではこのようなスタイルの授業を続けてきました。

2000年代になってようやく、プロジェクト型学習、ディベート、反転学習など、高等教育における新しい授業形態が試されてきました。そこに今、2つの大きな風が吹いています。

1つはコロナの風です。コロナウイルスが流行し、多くの大学ではオンデマンド授業やオンライン授業を行っていますが、それは過去の教室での授業風景の置き換え、電子化、インターネット化でしかありません。一方、たとえば、プロジェクト型学習では複数人で集まって相談しながら進めなければならないので、実施が困難になっています。新しい授業形態はコロナの大きな影響を受けています。

もう1つは、今回の話題でもある産学連携の風です。新しい形態の授業は、先生がやろうと思えばできることです。ところが、産学連携となると、先生の思い通りにはいかず、企業の方々の意見を聞きながら実行する必要があります。そこには、教室において絶大な権力を持っている先生にとって、メンタル的なハードルがあります。

コロナで授業が変わり、産学連携の重要性が訴えられている今、何をしなければならないのか。古いスタイルの授業の世界から新しい世界に動きつつある中、この2つのハードルのもとで、そうした新しい世界をどのように実現していくべきなのか。今回のシンポジウムが、その答えに一歩でも近づけるアプローチになればと思っています。

【講演1】

「社会変革と教育の未来~産学連携の可能性」

村上 清明 氏(株式会社三菱総合研究所 リサーチフェロー)

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村上 清明 氏(株式会社三菱総合研究所 リサーチフェロー)

村上 清明 氏
(株式会社三菱総合研究所 リサーチフェロー)

今、世界は歴史的な社会の転換期にあります。持続可能な社会への転換です。その中で日本社会は、少子化・高齢化・人口減少という問題については、断トツに世界の先頭にあります。過去の問題と異なり、どこかの国を見習うというわけにはいきません。日本が自分で考えて解決しなければならない問題です。経済社会では、規格品の大量生産型の商品やサービスの担い手はロボットやAIに移行し、需要の個人化が進み、市場は、ロングテール化しています。また、活動の場もリアル空間からサイバー空間へと移行しています。日本企業は、こうした新しい社会への変化のスピードに適応できていません。こうした環境変化において、どんな人材が必要とされ、教育は何をすれば良いのでしょうか。経済成長が国民の共有する目標ではなくなったように、大学受験が学びの動機にはならなくなってきています。

PISAの学習到達度調査の結果を見ると、日本は読解力、数学、科学とも上位です。しかし、今の社会は過去の経験や知識が役に立たない時代です。コロナによるパンデミックもそうですが、前例や経験が役に立たないときはゼロから考えるしかありません。そのような時の人材に必要なのは、「Do the things right」ではなく「Do the right thing」、つまり物事を正しい手順で行うことよりも、規則に縛られず、今本当に正しいことは何かを考えて実行することです。このような人材を育てる教育が日本でできているかというと疑問があります。

誰一人取り残さないというSDGsの理念においては、エリート教育だけでなく、残りの多数層の教育を考えなければなりません。エリートを育てるのは、ある意味でやさしいことで、動機を与えて機会も与えれば、どんどん育ち、社会で活躍できる場所もあります。しかし、真の意味で社会が豊かになるかどうかは、一部の人が大金持ちになるのではなく、多数層が豊かになるかどうかにかかっています。

この多数層の人たちがロングテール市場の担い手になります。個人で仕事をする人や、複数の仕事を持つ人も増えます。ローカルだけでなくグローバル市場を相手にする必要も出てくるでしょう。いろいろなことに関心を持ち、多様化したニーズを発見する能力が求められますが、そのためには基礎学力が欠かせません。現在では必要な時に情報をいつでもどこでも得られますが、それでも知識量は重要です。創造の多くは、様々な知識の結合によって生れるといわれますが、外部記憶の寄せ集めでは結合しないからです。知識量を増やすのに詰め込み教育は必要ありません。何か関心を持って得た知識は、記憶として定着し、多様な知の結合が化学反応のように起こります。

それでも社会に取り残される人がいるかもしれません。競争市場への適応が困難な層をいかに多数層に引き上げるかということも大切です。従来型の企業社会にはなじまないけれどもITを使ったオンラインの仕事ならなじむという人もいます。米ベンチャー企業のUPWORKでは、企業が働く人を選ぶ一方で、働く人も能力を高く買ってくれる企業を選ぶという双方向のオンライン労働市場を提供しています。何百種類も仕事が提示され、給料は市場価格で決まります。今回コロナの影響で、こうした働き方の未来が近づいたように思います。

こうした社会と教育の変化の中で、産学連携の可能性としては3つあります。まずは、大学から企業に学生を送り出すインターンに代表されるプログラムです。仕事を覚えるというよりも、学びの動機付けとしての機会です。そこでは、将来のサステナビリティ経営で企業がやるべきことに気づくかどうか、自分の今の知識や技術では何が足りないのかに気づくかどうか、こうしたことが学生にとって絶好の学びの機会になります。

次に、企業や行政、市民の方が大学に来て学ぶことです。企業では従来のように社内で再教育して配置転換するということが難しくなってきました。そういうときにリカレント教育の場として大学を活用する。様々な価値を結びつけて新しい価値を作るイノベーター人材は、獲得した知識を議論して組み合わせることを学ぶ必要があり、それは企業の中ではなかなかできないことなので、大学という場を活用するのが有効だろうと思います。

最後に、企業と大学が継続的に人材交流することです。これからは、旧来の専門深掘型の人材ではなく、イノベーター人材を教育することが求められています。これには実体験を通じた教育が必要で、それによって初めて人材を有効活用できるようになります。特に現代の複雑系の問題においては、過去に比べて知識やスキルがずっと多く必要になってきます。そのために、社会ニーズに適合した高度専門人材の育成が不可欠なのです。

【講演2】

「新潟大学における産学連携の取り組み」

山田 修司 氏(新潟大学 理学部理学科 教授)

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山田 修司 氏(新潟大学 理学部理学科 教授)

山田 修司 氏
(新潟大学 理学部理学科 教授)

本学の産学連携の取り組みでは、例えば新潟県の燕三条で地域企業と医学部および工学部で展開した連携事業があります。燕三条は従来から鉄鋼の加工に優れていて、包丁や爪切りなどは世界でも人気があります。その加工技術を活用して医療分野に必要とされる製品の開発を目指すものです。こうした地元の工業会や商工会議所などと新潟大学が連携した新たな商品開発の取り組みを、令和2年度から開始しました。また、大手企業との産学連携も行っています。安全管理を担う高度な専門人材の育成および学部・大学院における教育への協力におけるAGC株式会社との連携活動が始まっています。

1、2年生に大学で学習する目標を持ってもらうことを目的に、企業における長期の実践型プログラムを実施しています。学生は、地元企業もしくは首都圏の企業で3~5週間のインターンシップに参加します。こうした取り組みには長期ならではの教育効果があります。一発勝負のプレゼンのように見せるためのパフォーマンスでなく、本来の思考・行動特性が現れやすい。また、うまくいかないとき、自分のモチベーションが上がらないときも、プロセスを大事にし、継続的に取り組みを続けられる訓練が可能です。

仕事感・職業感、知識・スキルといったものは短期でも触れることができますが、思考・行動特性や学習感については長期でないと養えません。独りよがりな自己分析の結果ではなく、長期の就業で他者からフィードバックを受けながら、自身の思考・行動特性と社会に求められるものとのギャップに気づく。何が大事かを頭で理解するだけでなく、行動として腹落ちさせる。その結果、自分のモノサシが更新され、日常の学習行動につながるのだと考えています。

本学では数理・データサイエンス・AI教育にも力を入れており、それに関する産学連携も強化しています。学部のプログラムは「入門科目」、「データサイエンス・ベーシックプログラム」、「データサイエンス・リテラシー」、副専攻の「データサイエンス」という構成になっており、令和4年度から「入門科目」を全10学部で必修にします。経済学部、教育学部、人文学部、法学部、創生学部の学生を対象に、高校と大学の数学を連結するリメディアル教育も行っています。

副専攻プログラムである「データサイエンス」の修了要件にはインターンシップ科目群が含まれており、CTCによるオンライン形式に8人、新潟県内のIT関連企業による対面形式に3人の合計11名が、6週間のインターンシップに参加しました。11月に実施したデータサイエンスのコンテストでは、学生だけでなく教員も参加して行われた中で、このインターンシップに参加した学生はまとめ方が非常にうまく、大きな成長が感じられたことで非常に手ごたえを感じています。

研究および大学院教育における産学連携の取り組みとしては、INSIGHT LAB株式会社と新潟県のオープンデータを収集、蓄積、活用するための共同研究があります。また、本学で生み出された研究成果・技術等を実社会に還元することを目的に設立されたベンチャー企業を支援するために、「新潟大学発ベンチャー称号認定制度」を設けて運用を進めています。AI/ビッグデータ活用に関する産学連携活動を推進する「データ駆動イノベーションコンソーシアム新潟」も設立しました。

地方大学における産学連携のメリットとしては、人材育成に関して同じ地域の中での大学と企業というくくりで物事を考えてもらいやすいこと、その地域の経済団体や行政、コーディネート機関等を通じて、地域の企業に声掛けをしたり、情報を周知したりしてもらいやすいことが挙げられます。一方で、受け入れ先が公共交通機関では通いづらい立地の場合も多く、実習中の学生の移動・滞在の手段が確保しにくいこともあります。首都圏の企業でのインターンシップに参加させるにも、オンラインの普及で解消されつつあるとはいえ、移動、滞在の問題が依然としてあります。また、地方において数理・データサイエンス・AIを活用している企業または興味を持っている企業が少ないため、連携相手を見つけづらいこともあります。こうしたデメリットについても実感しているところです。

【パネル講演1】

「知的好奇心が成長を促進」

池上 敦子 氏 (成蹊大学 理工学部 情報科学科 教授)

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池上 敦子 氏 (成蹊大学 理工学部 情報科学科 教授)

池上 敦子 氏
(成蹊大学 理工学部 情報科学科 教授)

成蹊学園では、「ホンモノに触れる体験」によって問題意識をあたため、科学的思考に高めていく教育を目指しています。様々な事象を理解し、今まで経験したことがないことに対しても、自分で考え判断できるような人材が育つ環境を整え、それぞれの知的好奇心を刺激して、その人の一番得意なところをのばそうという考え方で教育を進めています。

私の専門である「組合せ最適化」の研究活動の中で、最も学生が大きく成長したと感じたことの一つが、鉄道の運賃計算に関する受託研究です。12時間半かかっていた運賃計算を1秒未満で解けるようにし、全国の会社ごと、ならびに、複数会社を含んだ運賃計算アルゴリズムを構築し、実際に適用され、特許も取得しています。

その中で学生は、過去の研究調査から、モデル構築、アルゴリズム構築、計算実験、学会発表、論文投稿といった活動を、企業の方が一年間、研究室に在中している環境において、毎日、本当のデータに触れ議論をしながら行いました。企業の方と動くことで、学生がどれだけ成長するか、ということを実感しました。

その他にも、訪問介護ヘルパーのスタッフスケジューリング、アルバイトのスタッフスケジューリング、学内での学校時間割作成、病棟ナースのスケジューリングなどの研究を行っていますが、いずれにおいても学生が大きく成長する姿を目の当たりにしました。

こうした成長のきっかけとしては、企業の方に助言をいただいたり一緒に活動してもらったりしたことが非常に大きい。知的好奇心を持って、受け身ではなく、これは自分の問題であり、自分が解決したい、そのことを聞いてほしい、といった感覚に目覚めると、学生は驚くほど成長します。

知的好奇心は、人を成長させます。産学連携でこうした機会をできる限り作って、本気モードで活動していきたいと考えています。企業の方々には、大学、高専、小中高を問わず、知的好奇心を刺激する問題を投げかけてほしいと思います。

【パネル講演2】

「早稲田大学のアントレプレナーシップ教育:産学連携を中心に」

島岡 未来子 氏 (早稲田大学 リサーチイノベーションセンター 教授、WASEDA-EDGE 人材育成プログラム 事務局長、神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーションスクール 教授)

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島岡 未来子 氏 (早稲田大学 リサーチイノベーションセンター 教授、WASEDA-EDGE 人材育成プログラム 事務局長、神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーションスクール 教授)

島岡 未来子 氏
(早稲田大学 リサーチイノベーションセンター 教授、WASEDA-EDGE 人材育成プログラム 事務局長、神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーションスクール 教授)

早稲田大学におけるアントレプレナーシップ教育は、文部科学省のグローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)に採択されたことから、2014年に全学的に始まりました。2017年からはEDGE-NEXTプログラムに採択され、2021年度が最終年度となっています。

EDGE-NEXTではコンソーシアムを組んでおり、主管機関が早稲田大学で、協働機関としての滋賀医科大学、東京理科大学、山形大学、多摩美術大学と連携し、お互いの強みを生かしてアクティブに研究活動をしながら起業教育を実施しています。北米や欧州の大学とも活発に連携して活動を進めています。

具体的には、ステップ1「意識醸成」、ステップ2「アイデア創出」、ステップ3「仮説検証」、ステップ4「実践への橋渡し」、ステップ5「起業」という流れに応じて、様々なプログラムを展開しています。その中のビジネス・クリエーションコースでは、産学連携科目や寄付講座の設置、講師派遣などを通じて様々な企業と連携しています。

例えば、2018年に始まった富山県新規事業創造インターンシップは、早稲田大学の学生と富山県の企業がチームを作り、富山県における地域イノベーション、企業内新規事業創造に貢献できるアイデアを作り上げていくものです。ワークショップと企業・自治体におけるインターンシップを組み合わせ、アイデア創出からビジネスモデルの検証までを、理論に基づいて実践的に学ぶことを目的に活動しています。その他にも、様々な産学連携の取り組みを通じて、起業教育を推進してきました。

こうしたプログラムを実施する際に問題となるのが、学生と企業がチームを組む場合に、どうしても学生が遠慮してしまい、自分たちの意見を表現できない、対等な関係を作るのが難しいということです。この問題を解決するため、権限がなくてもチーム全員が新しいリーダーシップを発揮できるように、プログラムに「チームビルディング」や「リーダーシップ開発」を導入しました。それに関わる「リーダーシップの振り返り」や「プロセスの振り返り」も組み込むことで、チームの中の関係性が平等かつ活発になるように工夫しています。

パネルディスカッション

「産学協同による人材育成」

パネリスト(五十音順)

  • 池上 敦子 氏  (成蹊大学 理工学部 情報科学科 教授)
  • 島岡 未来子 氏 (早稲田大学 リサーチイノベーションセンター 教授、WASEDA-EDGE 人材育成プログラム 事務局長、神奈川県立保健福祉大学 ヘルスイノベーションスクール 教授)
  • 村上 清明 氏  (株式会社三菱総合研究所 リサーチフェロー)
  • 山田 修司 氏  (新潟大学 理学部理学科 教授)

コーディネータ

  • 中島 淑乃
    (伊藤忠テクノソリューションズ株式会社、CAUA事務局)
パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッションでは、本日の講演者が会場およびオンラインにて登壇し、産学協同による人材育成について議論しました。

―― 日本の人材育成において、大学と企業の関係性が変わっていないと感じますが、何が障害になっているのでしょうか。

村上:見かけは進んでいないように見えるが、地下では着々と進んでいると思う。自由な働き方は企業にとってもメリットが大きいはずだ。例えば、「5年の特任期間の教育研究員だけど、給料は同期の2倍出す」といったことが出てくれば、ガラッと意識が変わる。そう遠くない時代にシフトが起こるだろう。

―― 大学で新しい取組や仕組みを作ろうとしたときに、壁になったことや後押しになったことはありましたか。

島岡:いろいろなステークホルダーがいて、それぞれのインタレストや利益がある。オンラインに関しては、留学中の学生がプログラムに参加できるなど、自由度が増した。一方で、地域課題の解決などのプログラムになると、学生がリアリティを持ちにくい。今後オンラインが増えていくにしても、どこかで実体験を入れていくことが、インターンの促進には必要と思う。

―― 共創するためには連携が重要で、地方の中での連携、地方を越えた連携、大学をまたいでの連携、海外との連携など様々ありますが、どうやって進めていったらいいでしょうか。

村上:日本人は連携を調整だと考える。意見の違う人を調整して、白と黒だから灰色でどうですかと。そうではなく、それを合わせてプラスアルファの何かを作っていかなければならないが、実際に作るとなると難しい。そうしたことを打ち破る、新しい革新的な技術やビジネスモデル、イノベーションが重要だ。

山田:企業が商品や技術をアピールするのと同じように、大学教員それぞれが持っている専門性は、日本語だけでなく海外でも、誰でもわかりやすく読めるように教員一人ひとりが積極的に情報公開していくべきだろう。企業が当たり前のようにやっていることを、大学も取り入れていくことが大事だと思う。

―― 未来に向けた人材育成について、一言ずつお願いします。

島岡:今後の教員は、ティーチャーからコーチになると考えている。話を傾聴して質問することを通じて、学生をコーチングする。そこで重要なのは、私もわからないということを教員が認められるか、それを学生に示せるかどうかだ。教員自身のマインドセットのチェンジがドラスティックに求められていく。課題を発見する力をつけさせることをどう入れていくかも重要だ。大学教育だけでなく、小中高から課題発見力を教育に取り入れる必要がある。起業教育はそういった問題にも活用できるだろう。

池上:持続可能な将来やこれから変わっていく世の中においては、こういう子にしなければいけない、ということではなく、多様性を持つことが持続可能にもなり、それぞれが持つ力を発揮しやすい。そうした考えのもとで最も成長させられる教育を提供できたらいいと考えている。

山田:「わかった」という瞬間を味わった学生は、どんどん自分で学んでいる技術などを極められるようになっていく。自分で何か「これだ」と思ったものを極められるような学生を育てていくことが大事だと思う。そうすれば、たとえ社会人になって方向が多少変わっても、新しいことにチャレンジすることになっても、自分で極められる力が出てくるはずだ。

村上:人間の能力には非常に大きな可能性があると感じている。スポーツ界の大谷選手や将棋の藤井聡太氏のように才能を持った若い人たちが、いろいろな世界にいると思う。これからは自分の得意なことを伸ばせば、サイバー空間で何万人に評価されて、仕事になるかもしれない。今まで眠っていた能力を、誰かに言われるより自分で気がつくのが一番いい。学生が様々なことを体験する機会があるといい。

クロージング

西村 浩二 氏(広島大学 情報メディア教育研究センター長 教授、CAUA副会長)

西村 浩二 氏
(広島大学 情報メディア教育研究センター長 教授、CAUA副会長)

西村 浩二 氏(広島大学 情報メディア教育研究センター長 教授、CAUA副会長)

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