イベントレポート
大学における生成AI活用は喫緊の課題であり、教育・研究・業務など多岐にわたることに加え、それぞれでの生成AIとの向き合い方も異なります。
本セミナーでは、教育や業務における生成AIを活用した大学DXの推進の事例とともに、企業での生成AI活用とそのガイドラインをご紹介します。
大学での生成AIの現状や課題、今後の展望を共有し、情報基盤の視点も交えながら、より良いDX推進のあり方を探ることを目的としています。関係者の皆様が生成AI活用を推進する際の一助となることを期待しています。
- 開催日時
- 2025年11月14日(金)
14:00~17:20 - 開催方法
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- 会場:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
大阪オフィス - オンライン同時開催
- 会場:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
- 主 催
- CAUA
講演内容
オープニング
西村 浩二 氏(広島大学 副学長(情報担当)/ 財務・総務室情報部長、CAUA会長)
下條 真司 氏
(青森大学 ソフトウェア情報学部 教授)
教育現場では生成AIの活用を巡り多様な議論があり、学術会議やユネスコのガイドラインでも指針が示されています。
実際の授業では、生成AIを活用したプログラミングや回路演習を行っており、AIが学習支援や課題解決に役立っていますが、学習の浅さや独自性の欠如といった新たな課題も生じています。個々の学生の進度や課題が異なるため、従来の講義形式では対応が難しくなっており、今後は個別指導や学習管理ツールの活用が不可欠です。
青森大学では、PBL(課題解決型学習)やデザイン思考を取り入れた新カリキュラムを来年度から導入します。地域課題や健康福祉、行政など多様なテーマに取り組みます。地域連携やICT支援員の派遣、プログラミングセミナーの開催など、実践的な学びを重視しています。
教育の形は大きく変わりつつあり、モチベーションを重視したキャリア教育や主体的な学びへの転換が求められています。今後も試行錯誤を重ねながら、より良い教育環境の構築を目指していきます。
【講演】
「業務DXでの生成AI活用 ~クローズド環境下でのLLM試作事例紹介~」
中村 豊 氏(九州工業大学 副学長(情報統括本部担当)、情報基盤センター長、CAUA運営委員)
中村 豊 氏
(九州工業大学 副学長(情報統括本部担当)、情報基盤センター長、CAUA運営委員)
九州工業大学では、業務DXを推進しており、業務標準化やスマートキャンパスの実現、バックオフィス業務の効率化を重視しています。情報統括本部では、紙の廃止やデジタル化、システム連携によるデータ集約と分析基盤の構築を進めていますが、部署ごとの業務フローの違いや縦割り構造、紙からデジタルへの移行に伴う不安などが課題となっています。
今回のAI活用では、学内規則約800件をテキスト化し、クローズド環境下でLLMに学習させることでFAQやチャットボットの自動応答を目指しました。データ形式の統一や手作業による修正、チャンクサイズやモデルパラメータの調整など、技術職員の工夫により精度向上を図りましたが、文言の揺れや認識精度の課題も残りました。ローカル環境での運用は情報漏洩リスクを抑えられる一方、高精度を求めるにはデータ整備やコストが大きく、現状では検索機能としての活用が現実的で、生成AIとしての運用にはさらなる工夫が求められます。
村井 武 氏
(伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 ITセキュリティ統括部 リードスペシャリスト)
生成AIは企業や組織の業務プロセスに本格的に導入されており、国内外の法規制・標準化(AI事業者ガイドライン、ISO等)も急速に整備されています。企業にとってはリスク管理が競争力の鍵となり、安全なAI活用のためのルール作りが重要です。
CTCグループでは、ISMS基盤上で「こうすれば使える」という利活用促進型の生成AIガイドラインを策定し、現場で守れる現実的な内容としています。入力データと生成物を分けて管理し、再学習の有無やデータ保存場所、サービス提供者のセキュリティ体制も確認しています。
運用面では、再学習しないAIサービスなら個人情報の入力も許可し、生成物は必ず人間がチェックします。ガイドラインはバージョンごとに進化し、利便性とセキュリティのバランスを重視しています。今後も法規制や標準化の動向を踏まえ、継続的な改善を行っていきます。
パネルディスカッション
「大学における生成AI活用の実践と展望」
パネリスト(五十音順)
- 下條 真司 氏 (青森大学 ソフトウェア情報学部 教授)
- 中村 豊 氏 (九州工業大学 副学長(情報統括本部担当)、情報基盤センター長、CAUA運営委員)
- 村井 武 氏 (伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 ITセキュリティ統括部 リードスペシャリスト)
コーディネータ
- 島野 顕継 氏
(大阪工業大学 情報科学部 准教授、CAUA運営委員)
島野 顕継 氏
(大阪工業大学 情報科学部 准教授、CAUA運営委員)
CAUA運営委員の大阪工業大学 島野氏の司会によるパネルディスカッションが行われました。
まず、教育、研究、事務的業務それぞれで生成AIを利用するときに、特に配慮を要すると考えるポイントについて議論されました。教育分野では、安全性や最低限の利用方法指導の重要性、研究分野では緩やかな運用と情報系以外への理解促進、事務分野では情報漏洩リスクへの対応やクラウドサービスの選定基準が指摘されました。
次に、生成AIを使うときのポリシーやガイドラインについても議論がされました。多くの大学では学生向けの最低限ルールのみが明文化されているケースが多く、事務・研究分野への適用やバージョン管理、ツールの公認・申請運用の難しさについての指摘がありました。
パネルディスカッションの様子
また、生成AIの進化や仕様変更に伴うガイドラインの柔軟な改定、利用者責任によるリスク管理、現場教育の必要性も強調されました。参加者からも各大学での対応状況などの共有があり、パネルディスカッションは盛況のうちに終了しました。
クロージング
小野 成志 氏(NPO法人コンソーシアムTIES 副理事長、CAUA監事)
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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
