イベントレポート
デジタル技術の急速な発展により、教育分野でもデータサイエンス、オンライン教育や生成AIの活用など、新しい技術を取り入れながら変化をしています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、デジタル技術を利用して製品やサービス、ビジネスモデル、社会を変革し、新しい価値を生み出す取り組みです。データやデジタル技術を理解し、操作し、展開するスキルと知識を持つDX人材は、様々な業種で高い需要があり、人材の育成が急務となっています。
このセミナーでは、大学、企業、地域でのDX人材育成の取り組みを紹介いただき、それぞれの立場から、求めるスキルや期待、課題についてお話しいただきます。DXを推進するのに必要なスキルセットは何か、どのような教育プログラムが求められているのか、社会のニーズにあった情報教育はどうあるべきか、参加者の皆様との情報交換や意見交換を通じて、議論を深めていきます。
- 開催日時
- 2024年11月22日(金)
14:00~17:30 - 開催方法
- 会場:広島大学 SENDA LAB
(東千田キャンパス) - オンライン同時開催
- 会場:広島大学 SENDA LAB
- 主 催
- CAUA
講演内容
オープニング
西村 浩二 氏(広島大学 副学長(情報担当)/ 財務・総務室情報部長、CAUA会長)
長年、運営委員長としてCAUAの活動を導いてくださった安東孝二様がご逝去されました。シンポジウム冒頭で、安東様のCAUAでのご活躍を振返り、黙祷を捧げました。
生成AIの出現に代表されるデジタル技術の急激な進展を踏まえ、AIなどテクノロジーが使える人材の育成・確保が急務となっています。2024年6月に産学官連携によるコンソーシアムを立ち上げ、高校生を対象に、AIを理解し活用する力を身につける人材育成プログラム「ひろしまAI部」を開始しました。取組内容として、AIの基礎を学ぶオンデマンド講座や、コーチセッション、企業訪問・ワークショップなどがあり、現在生徒たちは翌年3月の取組の成果を発表する「HIROSHIMA AI PITCH」に向けて活動をしています。また本事業は、2024年9月10日の知事定例会見で発表した「『AIで未来を切り開く』ひろしま宣言」の3つの取組事業のうちの1つとして位置付けられており、「HIROSHIMA AI TRIAL~失敗を生かそう~」をスローガンに活動を進めていきます。
岡山大学データサイエンス部(DS部)は、学生主導のDX推進を目的とし、地域や企業と連携しながら多様なプロジェクトを展開しています。DS部は、データサイエンスをキーワードに、文理を超えた発想で問題解決を目指す学生サークルで、2021年に発足しました。ダイバーシティ、アジャイル開発、学生主導のプロジェクト、地方総合大学ならではの連携を大事にしており、学生の入れ替わりや学業との両立の課題に直面しながらも、他の団体とのコラボレーションや教職員のサポートを活用しています。
また、経済産業省や内閣府の競争的資金を獲得し、地域や企業との連携を強化しています。具体的な取り組みとしては、スーパーマーケットのフードロス削減やプロペラ検査工程の自動化、金融のタレントマネジメントなど、様々なプロジェクトに取り組んでいます。また、大学祭の入退場管理システムやホームカミングデイの特設サイト作成など、学内DXにも貢献しています。
さらに、DS部は高校の探求授業支援やアントレプレナーシップ講座の実施など、高校生との連携も積極的に行っています。これらの活動を通じて、DS部は地域社会や企業との連携を深め、学生の実践的な学びを支援しています。
2022年から滋賀大学大学院データサイエンス研究科で派遣社会人として学び、2023年にはNVIDIA学生アンバサダープログラムに1期生として参加しました。本プログラムは、NVIDIA社が学生を対象に提供する支援プログラムで、GPUやAIに関するスキルの育成を目的にしています。各メンバーは、自身の興味のあるテーマに応じたチームに所属し、定例会やオンラインコースを通じて技術の理解を深め、実際に手を動かして検証を行います。そして、日々の取り組みの集大成として、技術共有ワークショップを企画・開催します。
ワークショップの開催にはさまざまな課題があり、例えば、参加のハードルを下げる工夫や告知方法の改善、開発環境の違いを乗り越える対策が必要でした。今後も新しいワークショップを企画し、内容をさらに充実させていく予定です。
技術やツールは進化しているものの、人間のリテラシが追いつかず、日本のデータ活用度やDX推進度が低いという課題があります。これを解決する手段として、体験型ゲームによるリテラシ向上を推進しています。体験型ゲーム「デタカツ」では、疑似的にデータの課題に直面しながら解決策を議論し、組織のレベルを上げる体験を提供しています。また、教育の分野のファシリテータ不足を解消するために、メタバース版のデタカツを開発しました。ゲームによる相互学習は、様々な領域のDXにも応用できる可能性があると考えています。
パネルディスカッション
「未来を変革するDX人材育成の取組み」
パネリスト(五十音順)
- 池坂 和真 氏 (岡山大学 DS部)
- 嘉悦 里奈子 氏 (伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 中日本開発部)
- 澤村 駿介 氏 (広島県 商工労働局 産業人材課 未来人材育成グループ)
- 福永 圭佑 氏 (伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 金融NEXT企画部 部長代行)
- 前田 緑仁 氏 (岡山大学 DS部)
コーディネータ
- 野村 典文 氏
(周南公立大学 情報科学部長 教授、CAUA運営委員長)
本シンポジウムの最後のプログラムとして、CAUA運営委員長の野村氏の司会によるパネルディスカッションが行われました。
まず、産学官連携の現状と課題について議論されました。産と学の連携は進んでいるものの、官との連携はまだ不十分であり、組織全体での進展が必要とされています。学生の視点からは、学生を通じてのつながりが活発になると、大学と企業の新しい連携の形が見えてくるのではないかとの意見もありました。
さらに、地方創生と教育のDXについても議論されました。デジタル技術を活用して地方の活性化を図る取り組みが紹介され、学生が興味を持つ分野に焦点を当てることの重要性が指摘されました。
最後に、未来の教育に向けて、変えるべきことと変わらないほうがいいことについての意見が交わされました。デジタル化が進む中で、教育は教師と生徒の分かち合いが重要であり、大学や高校、企業など一つの組織にとらわれない共創の場が必要であるとの意見が多く出されました。
このように、多岐にわたるテーマが議論され、1時間におよぶパネルディスカッションは盛況のうちに終了しました。
クロージング
只木 進一 氏(佐賀大学 理工学部 教授、CAUA運営委員)